2024年06月09日
トリーター:山本

クラゲ採集出張! ~佐世保・有明海~

先日、長崎へクラゲ採集に行ってきました! 実は長崎の佐世保はクラゲ界の中で「クラゲ天国」と呼ばれており、さまざまな珍しいクラゲが出現することで有名なのです。えのすいでは 2019年まで継続して採集に行っていました(長崎産クラゲあなたはどこから来ましたか?)ので、今回は 5年ぶりの佐世保出張。今回も、佐世保市内にある水族館「九十九島水族館海きらら」のみなさんに大変大変お世話になりながら、佐世保の海を思いっきり堪能してきましたよ。しかも今回はなんと、いつもクラゲ研究でお世話になっている黒潮生物研究所の戸篠博士も調査に同行してくれました。これは心強すぎる・・・! ということで、佐世保の思い出とともに、出会った生き物たちを紹介していきます。

佐世保に到着した私たちは、さっそく(お昼に駅前のちゃんぽんを食べてから)九十九島水族館に向かいます。九十九島水族館のクラゲ展示はすごいです。ここでしか見ることのできないクラゲや、普通の図鑑には載っていないような珍しいクラゲが展示されており、クラゲ好きにはたまらない空間ですよ。初日は水族館を時間いっぱい堪能し、次の日からいよいよクラゲ採集三昧です。
朝から佐世保の北西に位置するとある漁港へと向かいました。海を覗くと・・・

クラゲ天国!! ぱっと見でもカンパナウリクラゲやカブトクラゲが数えきれないくらい漂っており、たまーにツノクラゲやウリクラゲが混じっています。それを見て大興奮の私たちでしたが、海きららのスタッフからは「ちょっと前はもっとたくさんいましたよ」と衝撃の一言。これで本気じゃないのか・・・! さすがクラゲの聖地です。


途中近くにある漁港を点々とめぐりながら、次に、九十九島水族館から 30分ほど車で移動したところにある(クラゲ界では)有名な漁港へ行きました。先ほどの漁港は潮回りのいい流れのあるポイントでしたが、こちらは水面が穏やかで、いかにもクラゲが溜まりそうなポイントです。そこで見つけたのは・・・ヤマトメリベ!

半透明な体でぱっと見クラゲのように見えますが、ウミウシの仲間です。そこそこなレア生物で、いつでも見られるものではありません。最大 50㎝くらいになる大型のウミウシで、体をぐねんぐねんくねらせて泳ぎます。今年の佐世保の海ではなぜか大量発生しているそうで、出張期間中もあちこちで見かけました。当館の展示用に 1個体だけ採集し、パッキング。これが 5月の間だけクラゲサイエンスで展示していた個体です。

潮が引いていた時間だからか、その日にクラゲの姿はそこまで見えず・・・(とはいえカブトクラゲとカンパナウリクラゲはたくさんいました)。そこで翌日、同じくその漁港へ朝早くから向かいました。そこでまず見つけたのはハナガサクラゲです。

水族館では定番のクラゲかもしれませんが、私は初めて野外で採集しました! 毒々しい見た目で力強く泳ぐ姿がかっこいい! 夜行性のクラゲなので、採集できたのはラッキーでした。早起きしてよかったです。
他にもミズクラゲやアカクラゲ、稀種キヨヒメクラゲなどを見ることができました。最初の漁港と同じく少し前はもっとたくさんクラゲがいたそうなので、またタイミングを合わせて伺いたいですね。

さて次に(お昼に佐世保バーガーを食べてから)向かったのは、佐世保から意外と近い有明海。日本一の干満差を誇るこの海域では、マメヨドクラゲという汽水性のクラゲがいることが知られており、戸篠さんがそのクラゲを過去に採集したことのあるポイントへ案内してくれました。

有明海といえば「ムツゴロウ」。たくさんいましたよ。こちらは戸篠さんの渾身のムツゴロウショット↓ 良い。

普段ほぼ毎日クラゲを採集している身としては、こんな流れのある浅くて泥交じりの河口でクラゲが採れるとは思えません。正直心の中で「絶っっっ対いないでしょ・・・」と思いながら、半信半疑でネットを引きます。

いやいや、こんな泥水の中にクラゲがいるわけ・・・・・・いる! すごく小さいのが!


クラゲ担当として毎日そこそこ密に関わってきましたが、まだ「クラゲ」という生き物を舐めてました。大反省です。こんな環境で生活できるのか・・・。本当にすごい生き物だと改めて思いました。採集したときは 1㎜あるかないかくらいでしたが、すくすく育って今では 1㎝ほどに。先日クラゲサイエンスで展示デビューしました。


当館では数年ぶりの展示で、私の先入観を変えてくれた特別な個体です。ぜひご覧ください。

有明海で衝撃の出会いを経て、帰りの飛行機の時間が近づいてきました。しかしまだ時間はある! 最後のあがきで空港の近くにある漁港へ行くと、そこでも衝撃の出会いが。


お化けサイズのカギノテクラゲが泳いでいました! 後々測ると傘径は驚異の 4㎝! 普通は大きくても 3㎝くらいなので、見た目が全然違います。戸篠さんもこんなに大きい個体は初めて見たと驚いていました。本種は毒が強いことで知られていますが、この個体に刺されたらどうなってしまうんでしょうか・・・試してみ・・・いや、流石にやめておきましょう。最後の最後で本当にいい出会いがありました。

今回もさまざまな生き物に出会えましたが、もしタイミングが少しでもズレていたら見られなかったかもしれない・・・そう思うととても愛おしいです。出張採集に行った際は、現在の展示してるメンバーやバックヤードのキャパシティなどをあれこれ考えながらクラゲを搬入します。遥々九州からえのすいに来てくれた選ばれしクラゲたちを、ぜひご覧ください!

クラゲサイエンス

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