みなさんこんにちは!八巻です。
動物の行動というのは、時に私たちの好奇心を大いに刺激する純粋な驚きを与えてくれます。
温泉に入るサルや切符を買うカラスなど、哺乳類や鳥類の後天的に獲得した行動、いわゆる学習が魅せる驚きや、意外性が世間の話題をさらうこともしばしば。
相模湾大水槽のショーに出演する魚たちの学習能力にも、目を見張るものがあります。
一方で、後天的な行動である学習と対比されることが多い、生まれ持っている生得的な行動が、その生物の体の構造と機能と見事に組み合わさったところを目の当たりにした時は、難解なパズルを解くカギが見つかったときのような、まさに雷に打たれる衝撃です。
以前テンガイハタが頭を上に、垂直に立ち泳ぎをする姿を間近で見た時の感動はまさにそれでした。
大きく長い体を泳ぎ方と体色で見事にカモフラージュしているようすは、本当に見事の一言に尽きます。
ゴマフイカのなかまの上下互い違いに向いた左右の眼の謎が、実はその泳ぎ方にあったという話もそうですし、カタツムリ専食の蛇の左右の歯の形の違いがカタツムリの巻き方向と共進化しているという話も同様です。
これらについて詳しく書きたいのはやまやまですが、有名な話ですのでぜひ調べてみてください。
反対に、理解できない謎の行動に思わず吹き出してしまうこともあります。
いつも通り前置きが長く恐縮ですが、今日は深海lで展示中の何かを背負わずにはいられないカニの仲間、「ホモラ科の一種」のそんな行動についてのお話です。
ホモラは特殊な体の構造をしているカニで、一番後ろの脚、第4歩脚でいろいろなものを掴んで背負います。
調べてみると、以前 鈴木トリーターがオオホモラの背負うものについて日誌に書いていました。
ナマコを背負ったり、ヒトデを背負ったり、確かに本当にいろいろなものを背負っているようです。
今日登場するホモラは昨年底曳網で採集したもので、1年以上元気な状態で飼育できています。
ある時夕方の見回りをしていると、そのホモラが脱皮しようとしているところに出くわしました。
ホモラの脱皮を見るのは初めてですので、それだけでも好奇心を刺激されるわけですが、何より気になったのは皮を脱ぐ前に背負っていた “俸” もといヤギの骨軸はどうなるのか?ということです。
実はこの棒はこのホモラのお気に入りで、かなり長い間持ち続けているものですので、なおさらです。
きれいに脱皮が成功すれば、棒を持ったままの脱皮殻ができあがるはずです。
そして、脱皮し終わったホモラ本体は何も背負っていない状態のはずです。
新しい背負うものを見つけるのか、あるいは自分の脱皮殻から棒を奪い取るのか、はたまた脱皮殻ごと背負ってしまったりするのか・・・
想像は膨らみ、好奇心が刺激されます。
ちょうど手元にタイムラプスカメラを持っていましたので、それを仕掛けて翌日回収してみることに。
翌朝確認してみると、2番目が正解でした!
なんと自分の脱皮殻からわざわざ棒を奪い取り、それを背負っていたのです。