2009年01月27日
トリーター:伊藤

もどきの方がもはや希少に・・・


「もどき」とは「こっけいに真似するもの」、「擬似的なもの」といった意味あいで、本来は主役の二の次にくるようなものを指します。
魚にもある種類に形が似ていたがために「○○モドキ」と名付けられてしまったものがいます。
今回紹介するタナゴモドキもその一つです。

確かに体はタナゴのように縦に平べったく、中層を遊泳することも多いですが、れっきとしたハゼの仲間です。
亜熱帯地方の川に群がりで暮らす本種は、恐らく現在の日本の川で出会うのが最も難しい魚類の一つです。
悲しいことに、本家タナゴ(これすら結構見られなくなっているのに・・・ )より珍しくなってしまったわけです。

10年ほど前、私が大学生の頃には、沖縄本島でも本種が採集でき、石垣島あたりで川を探れば結構簡単に出会える種だったのですが、昨年の石垣島では探せど、探せど見つからず・・・ 。
いなくなった原因はいろいろあるのでしょうが、生息地はグッピーやティラピアに占拠されてしまって、タナゴモドキの居場所はもうないかのようでした。

一方で本種は他の多くのハゼと同様に稚魚が海で暮らし潮流によって分散できるため、死滅回遊魚として温帯地方のアマモ場などに出現する例も知られています。
日本より南の生息地はまだ健全な場所があるようなので、日本の川の環境が良くなれば、また定着して増えてくれるかもしれません。
水族館としては、未だ繁殖が難しい本種を何とか殖やせるように努力したいと思います。

天皇陛下のご研究コーナーの「絶滅危惧種のハゼ」水槽にいます。
まだ展示したばかりでビクビクしていますので、そーっと驚かさないようにご覧ください。

珍種中の珍種?タナゴモドキ 珍種中の珍種?タナゴモドキ

皇室ご一家の生物学ご研究

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