2008年05月04日
トリーター:伊藤

川の貝を背負うヤドカリ

月が替わり、ペンギンプール前のテーマ水槽が「なぎさの観察体験便利マップ ~江の島編~」に変わりました。
毎月違うトリーターがコーディネイトする当コーナーは、お客さまには「頻繁に新しくなる展示」として人気があり、「身内」の私にとっても、毎度先輩の展示技を見られるという醍醐味?があります。

今回担当の植田さんは、20年以上にわたり江の島を調査し続けているトリーター 1(といってもいいですよね)の江の島通で、解説による江の島の各ポイントへのアプローチなど、なるほど参考になりますし、展示生物もご専門のイガイ類をはじめ、少しマニアックで味のある選抜が興味深いものとなっています。
その中には私の思い入れが深い生物もいます。
ユビナガホンヤドカリです。

本種はヤドカリでは珍しく、淡水の影響を受ける河口や干潟にすみます。背負う宿貝は、周りにたくさん転がっているウミニナ類や近くの岩場にくっ付いているニシキウズガイ類をよく使います。
ある日、あるポイントで観察を続けていると、違和感のある貝殻に入ったヤドカリを見かけたので、よく見てみると、それは海にはいないはずの「カワニナ」。カワニナは川の護岸の周りや田んぼの水路などにいる黒くて細い巻貝です。ヤドカリの観察場所の少し離れた場所には、小さな川が流れ込んでいましたので、上流からドンブラコと流れてきた貝殻をヤドカリがどうにか見つけて背負ったのかも知れません。
ちょっと面白いと思ったので、学会にも報告したところ、珍しい事例として記事を載せていただいたという思い出があります。

実は、本種が江の島にもいるとは、私は最近まで知りませんでした。島の西側は境川の河口といえなくもない環境なので、いても不思議はありませんね。
その他にもクサフグの集団産卵や、上の方の山林の生き物など、江の島で知らないことが多くあることに気付きます。
地元の生物屋さんとして恥ずかしくないように、江の島の自然にもっと触れようと感じているこの頃です。

見つけた!カワニナ背負いのユビナガホンヤドカリ見つけた!カワニナ背負いのユビナガホンヤドカリ

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