2009年10月13日
トリーター:伊藤

泥の海を訪ねて(13)


水槽をにごらせた犯人確保

夏の終わりころからでしょうか、暖かい海コーナーのマングローブ水槽の濁りがなかなか晴れない日々が続いていました。
魚が見えないほどではなく、ある意味自然っぽいともいえたのですが、それまでがスッキリ澄んでいただけに、ずっと頭がもやもやしていました。
掃除の頻度を増やしたり、水を思い切って換えてみたり、水底をかき混ぜる生物を一時移動させてみたりしましたが、しかしどれをやっても効果がありません。
しかし先日、ふとその原因に気付きました。

フナクイムシ

流木に穴をあけて棲む細長いミミズのような生物ですが、二枚貝の仲間です。これが、水槽内に設置した木の中にいつの間にか棲み着いていたのでした。
体内に共生させたバクテリアによって、普通の生物が消化できない木の成分「セルロース」を栄養とできるのです。
削り取った木くずの余りを水管からファッファッと吐くため、水槽内には木くずが舞っていた。
昔、船が木で造られていた時代には、船を劣化させる困りものでしたが、水槽内では特に悪いこともせず(濁らせますが・・・)頑張っていますので、もうしばらくそのまま展示しておこうと思っています。
かなりマニアックですが、本種の営みを間近で見られる機会はそうありません。
興味のある方は木の表面をよく見てみてください。
小さなアサリのような水管が木くずを吐いているのが見えます。よろしければお試しください。

バックナンバー
[ 3年目の大変身、さらに! ]
[ 新天地へ ]
[ 人知れず成長中 ]
[ 身近な干潟は干潟となるか ]
[ マングローブの主役は植物? ]
[ 生きたキイロホソゴミムシを見られるのは世界中でここだけ! ]
[ 足元に天然記念物? ]
[ 3年目の大変身なるか ]
[ 川にいる違和感 ]
[ アサリを襲う外来種 ]
[ 陸へと上がる進化中? ]
[ 真冬の干潟に驚異の珍種 ]

フナクイムシの仲間フナクイムシの仲間

太平洋

RSS