その魚に初めて出会ったのは学生の頃。
夏休みを利用して訪れた屋久島の巨大な堤防で釣りをしていた時のことでした。
50cmは超えるかなりの大物。
しなる竿を慎重に操ってなんとか堤防の上に引き上げました。
ほうきのように広くて長い尾びれ、体側の青い模様。
口と体の形からカワハギの仲間であることはすぐにわかりましたが、ちょっと異様な風貌のその魚は、かなり戸惑っているような目でこちらを見ていました。
うーん(カワハギに似ているし)・・・ 食べてみようかな?
でもなあ(この青い模様は)・・・ やっぱり止めておこう!
命拾いしました。
わたしもその魚も・・・。
その魚の名前は「ソウシハギ」。
イソギンチャクの仲間が大好物のソウシハギは、イソギンチャク由来のパリトキシンと呼ばれる猛毒を体内に蓄える性質があります。
パリトキシンはフグ毒で有名なテトロドトキシンに比べて数十倍、その毒性は生物界でも最強クラス。
特に内臓に毒を蓄える性質があるので、もしあの時食べていたら大変なことになっていたかもしれません。
暖かい海が好きなソウシハギですが、海流に乗って相模湾にもやってきます。
“えのすい”では、先日江の島のマリーナで採集された幼魚を季節来遊魚水槽で展示しています。
食べると大変危険な魚ですが、青い模様がとてもきれいです。
ひらひらと器用に泳ぐ姿とユーモラスな顔。
ぜひ探してみてください。
夏休みは野外でいろいろな生き物と出会うと思いますが、食べる際にはご用心。
ご自分の勘も大切に。
楽しい夏の思い出を作ってくださいね!