私だけかも知れませんが、水族館で勤務していると、みなさんが見たがっていたり、触れ合いたいと思っている生き物を誤解、というか、察知するのに鈍感になってしまうことがあります。つまり、実はお客さまが求めているのに「こんなのを見せてもなぁ」と思い込んでしまうのです。
おそらく、館内や近隣の海、魚市場などでしょっちゅう目にしているうちに、そう思い込んでしまうためだと思っています。これを防ぎ、察知カンのようなものをゆり戻すために、お客さまや家族など一般の方々の意見をちょこちょこ聞かねばと思っています。今回はそんな仲間たちを取り上げてみます。
イセエビ
エビ、と呼ばれるものの中で最も有名で、大きく、よく動き、こそこそ隠れない、水面に出て逃げない(重要!)、さらには入手もしやすく飼育も難しくない(繁殖は別ですが)と、非の打ち所がない存在です。にも関わらず、つい脇役ポジションに追いやってしまいがちです。上記認識のうえ、当館では「相模湾ゾーン前半の湘南港の水槽に多めで展示しています。
水槽のまわりを通りかかると「おいしそう!」「(食材として)すごい!」と言いながら注目しているお客さまがやっぱり多いです。展示のメインにすえて良かったと思える瞬間です。
なお、「おいしそう」と言ったのを私こと通りすがった飼育員に聞かれ「しまった」と感じるお客さまもおられますね(微妙な態度でわかりますよ~)。その感想、全然OKです。私も食べたい! がっつきたい!です。
メジナ
内輪では「またこれか」という扱いをされがちな脇役中の脇役、“万年ないがしろ”キャラなのですが、特に釣りが好きな方の中に、ファンが多い魚です。
入口最初の水槽「出会いの海」は波の強いタイドプールのイメージがありますが、私的には江の島南岸とか烏帽子岩の荒磯で、強烈な波が打ち砕けるイメージで、白波の下で活動するいいサイズの磯魚を見せたいと思っている面があります。
実際に磯釣り師の知り合いから「あの展示はすごくイイ! サラシの下で磯魚がどういう動きをするのかよく分かる」と言ってもらえたことがあります。なのでつい、イシダイやらカンパチやら、タイドプールらしくない(荒磯らしい)魚を展示してしまうのでした。