2024年06月22日
トリーター:松田

いろイロな『胃』

みなさんこんにちは! 新人獣医師の松田です。
早速ですがご報告。前回の私のトリーター日誌 で、あす本番の採血をします!というお話をしたのですが、その結果は・・・ 。
だめでした。検査に必要な量の血を採るのに時間がかかってしまってバンドウイルカの「サワ」に長く我慢してもらったり、カマイルカの「クロス」のときにはそもそも血管に刺すことができなかったり(その後先輩獣医に代わってもらい、採血はできました)。やはり練習と本番は全く別物だと痛感しました。もっと鍛錬を積む必要がありそうです。

さて、獣医師としては採血のような手技を身につけることも大切ですが、それと同じくらい知識を付けることも重要です。ということで今回は、私といっしょに水族館の生き物の体についてお勉強してください!
今回のテーマは「胃」についてです。

私たち獣医師の仕事として、内視鏡という道具を使って生き物の胃の中のようすを検査することがあります。
そのときに撮影した画像などもお見せしながら、それぞれの胃の特徴について簡単にご説明します。

これが内視鏡です。これが内視鏡です。


最初はバンドウイルカです。
実はバンドウイルカの胃は、ヒトと違って 3つの部屋に分かれています。

左の写真が第一胃と呼ばれる部分、右の写真が第二胃と呼ばれる部分です。粘膜の色合いも違いますね。
イルカは捕らえた魚などをほとんど噛むことなく丸のみします。第二胃にヒトの胃と同じような機能があっていわゆる胃液を出すのですが、不思議なことにその胃液は第一胃に戻っていきます。第一胃で魚などが胃液と触れ合いすり潰されることで、腸管での吸収を行いやすくしているのです。そして第二胃、その後にある第三胃と呼ばれる部屋を通過して、腸管にたどり着きます。


続いてフンボルトペンギン。

手前から、食道、腺胃、筋胃です。こちらもそれぞれ粘膜のようすが違っていますね。
ペンギンの胃は 2つの部屋に分かれていて、まず胃酸などを分泌する腺胃があり、奥の筋胃に続きます。ペンギンも魚を丸のみするため、腺胃を通ってきた魚を筋肉が発達している筋胃ですり潰しているようです。


最後にアオウミガメです。
ウミガメの胃はヒトと同じく部屋は 1つです。ですが・・・

こちらは胃の手前にある食道です。内側にトゲトゲがたくさん生えています。このトゲトゲは食べたものが逆流して出ていくことを防いでいると考えられています。
しかしこのトゲトゲがあることで、本来は食べてはいけないものを飲み込んでしまったときにそれを吐き出すことが難しくなっています。野生のウミガメでは、ビニールを大量に飲み込んでしまいそれが原因となり死んでしまうことも・・・。ごみの処理には気をつけたいものです。

今回は外見ではわからない内臓のお話をしましたが、ちょっとマニアックすぎましたか・・・?
現在えのすいでは、館内のイベントなどで生き物たちがごはんを食べているようすを見ることができます。その時に、今ごはんが胃の中でどうなっているのかな~なんてことに思いを馳せるのもいのではないでしょうか?

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