2024年07月18日
トリーター:松田

血液検査からわかること

いきなりですが、血液検査って結局なんなの?って思ったことはありませんか?
トリーター日誌でもたびたび話題に上がりますし、私も以前、血液検査をするための採血について取り上げました。
毎年健康診断を受けていらっしゃる方はなんとなくわかるかもしれませんが、「なんで痛い思いをしてまで血を採られにゃならんのだ!」という気持ち(きっとえのすいの生き物たちも同じ気持ちでしょう)を払拭するためにも、ここで一度、血液検査でなにがわかるのかということを簡単にまとめてみようと思います。

採血した血液は、検査したい項目に合わせて専用の採血管に入れていきます。採血管には血液が固まるのを防ぐ成分や、血液の細胞と液体を分離しやすくする成分などが含まれていて、色ごとにその成分と検査項目が決まっています

写真にあるのが、えのすいのイルカの採血・血液検査で使っている採血管です。
では、採血管の色ごとに何を調べているのかをご説明します。

茶色…生化学検査
血清と呼ばれる血液の液体成分に含まれるタンパク質や酵素、電解質などを測定します。
血清で検査できるものはたくさんあるのですが、代表的な検査項目とそれからわかることとして、
・γ-GTP、AST、ALT:肝機能の評価
・尿素窒素、クレアチニン:腎機能の評価
・血清鉄:細菌感染の評価
などがあります。
“えのすい”では、外部の検査機関に提出する分と、後で調べたいことが出てきたときに使えるように自分たちで保存する分として2本の茶色の採血管を一度の採血で使用しています。

紫色…血液の細胞成分の検査
血液中の赤血球や白血球、血小板の数、白血球の種類ごとの割合などを測定します。
赤血球が減っているといわゆる貧血の状態で、どこかで出血が起きているか、赤血球をつくる力が落ちているか、などと考えます。白血球が増えている時には感染症にかかっているのではないか、と疑ったりします。

灰色…血糖の測定
からだのあちこちでエネルギーとして使われている血液中の糖分、つまり血糖がどれくらいあるのかを測定します。個体の栄養状態に問題がないかなどを調べることができます。

黒…フィブリノーゲンの測定
フィブリノーゲンは、血液が固まる時はたらく血液凝固因子のひとつです。細菌感染などにより炎症が起きると、血液中のフィブリノーゲンが増えることがあるため、主に炎症の評価に使います。

血液検査では他にも、感染症をうたがった場合に血液そのものを培養して細菌が検出されないかを調べたり、繁殖を目指しているときには性ホルモンの濃度を測定したりもしています。

ご紹介したようにたくさんのことがわかる血液検査ですが、「この検査値がこうだからこの病気だ!」と一発でわかる場合はほとんどなく、生き物のようすや他の検査との組み合わせで、「こうなんじゃないだろうか?」と推測しながら、予想される疾患などを絞り込んでいきます。そのためにはやはりたくさんの知識・経験が必要で、まだまだ自分には足りないものばかりだなと痛感する毎日です。もっともっと勉強して、えのすいの生き物たちのくらしを支えていける獣医師になれるよう頑張っていきます。

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