2024年08月10日
トリーター:松田

うんちが教えてくれること

みなさんこんにちは、新人獣医師の松田です!

前回のトリーター日誌では血液検査についてお話しさせていただきましたが、“えのすい”のイルカで定期的に行っている検査は他にもあります。今回は、「うんち」を使った検査についてお話ししたいと思います。

…え、うんちで何がわかるの? って思ったそこのあなた。実はうんちには大切な情報が眠っているのです。

イルカの場合、普段であればうんちは水中でしてしまいます。ですので検査をしたい場合は、写真のようなチューブをおしりの穴に入れさせてもらって、直接うんちを取り出します。

検査では、主に「見た目・性状」と「菌叢(きんそう)」を確認しています。

「見た目・性状」は、私たちがトイレの後にするように(しますよね?)うんちの状態を見て異常がないか確認します。
通常時のイルカのうんちは、淡い緑〜深緑の色をしていて、泥のような状態になっていることが多いです。調子を崩すと、うんちの色がいつもと変わったり、水っぽくなったり、粘っこくなったりすることがあります。

続いて「菌叢」の検査についてです。聞きなれない言葉かもしれませんが、簡単に言えば腸内細菌のチェックです。イルカの腸の中にも、消化を助けるためにたくさんの細菌が棲んでおり、うんちの中にもそれらが入っています。その細菌を特殊な液体で色を染めて、どんな細菌がうんちに含まれているのかを顕微鏡でチェックします。
見た目だけでは具体的に何の菌かを特定することは難しく、菌叢の個体差も大きいのですが、そのイルカの通常時にどんな細菌がどれくらいのバランスで含まれているのかを知っておくことで、調子を崩した時の検査結果と照らし合わせることができるようになり、病気の原因の特定に役立つのです。

赤丸:グラム陽性桿菌、青丸:グラム陰性桿菌、黄丸:芽胞赤丸:グラム陽性桿菌、青丸:グラム陰性桿菌、黄丸:芽胞

細菌について少し詳しくお話しすると、細菌は大きく分けて、先ほどお話しした特殊な液体で紫色になる「グラム陽性菌」とピンク色になる「グラム陰性菌」に分かれ、形態的に「桿菌(かんきん)」と「球菌(きゅうきん)」にも分けることができます。
さらに細菌の中には「芽胞(がほう)」と呼ばれる防御モードになれるものもいます。この菌は調子を崩したイルカから検出されることが多いのですが、健康でも毎回検出される個体もいて、こういう場合に普段から菌叢をチェックしていることが役立ちます。
うんちは汚い! と多くの人は言うかもしれません。
しかし診療においては大切な情報を握っているうんち。みなさんも毛嫌いせずに、ぜひうまく付き合っていってください。

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