2024年09月08日
トリーター:松田

胃液の検査

みなさんこんにちは! 新人獣医師の松田です。
いろいろな検査について紹介している私のトリーター日誌ですが、今回は胃液の検査についてお話しします。

私たちヒトではあまり馴染みのない検査ですが、えのすいの一部のイルカでは定期的に胃液を採取して検査をおこなっています。
胃液の採り方としては、内視鏡を使って吸引する方法と、チューブを胃内に入れて陰圧をかけて採取する方法があります。
内視鏡を使う方法では、胃内のようすをカメラで見ながら胃液を採ることができます。
チューブを使う方法は比較的簡便におこなうことができますが、イルカのトレーニングが必要になります。

チューブでの胃液採取チューブでの胃液採取

採取した胃液は、「見た目」「pH」「沈渣」の検査をします。
「見た目」は、色や浮遊物の有無などを確認します。個体や体調、投薬の状況によって、色が大きく変わることがあります。
「pH 」は専用の試験紙を胃液に浸し、色調の変化を見て測定します。イルカの胃液もヒトと同じく基本的に酸性で、pHは2くらいになります。ただ、これも体調により変化し、pHが中性に寄ってくる場合もあります。

色は違えど、どれもイルカから採取した胃液とpHを測定できる試験紙。今回のpHは2色は違えど、どれもイルカから採取した胃液とpHを測定できる試験紙。今回のpHは2

「沈渣」は、胃液を遠心分離して沈んだもののことです。沈渣は染色をおこない、顕微鏡で観察をします。胃に炎症がある場合、胃から剥がれた細胞や白血球、場合によっては細菌や真菌が見られることがあります。
また、えのすいでは培地に沈渣を塗布して培養をおこなっています。この培地は、胃炎を引き起こす原因となるカンジダという真菌が選択的に発育する成分になっており、カンジダを見落とすことなく検出することができます。そのうえ、発育したカンジダの種類によってコロニーの色や形が変化するという性質もあるため、治療の指針にもなります。

右:培地に発育したカンジダのコロニー、左:顕微鏡で見た、沈渣に含まれていたカンジダ酵母右:培地に発育したカンジダのコロニー、左:顕微鏡で見た、沈渣に含まれていたカンジダ酵母

胃にチューブとかを入れられるのはちょっとつらそう・・・、と思われる方も多いと思います。胃液採取に限らずですが、検査材料を採取するためにはイルカだけでなく他のトリーターたちの協力が不可欠です。私も、正確な検査をおこなう技術や結果を解釈するための知識をしっかりつけて、その苦労にきちんと報いることができるよう努力していきます。

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