(山本)比較的穏やかな海域で停泊しているため、ようやく心に余裕が出てきました。恥ずかしながら、先ほど丸一日ぶりにものを口にしました…。ああ、味噌汁が…体に染みる…。
2日目のことについて書いていこうと思います。
そんな中でもテキパキとモップ掛けをする足立トリーター。すごすぎる。
そして朝ごはんの後は、本日一回目の底生生物採集(ドレッジ)です。昨日とは違って泥が多く、中にいた生き物も違ったようです。傷つけないように、採り逃さないように、丁寧に泥を海水で流して生き物を回収していきます。
そして、次はビームトロールでの底生生物採集です。が、山本はこのあたり倒れていたので、足立トリーターに代わりますね。お願いします。
(足立)代わりました。足立です。
ビームトロールでは、魚が結構入るよ、と聞いていたので、そのつもりで気持ちの準備をしていました。上がってきたコットエンド(採集物が溜まるところ)が、やけに膨らんでいると思ったら、大きな石が入っていました。いろいろな付着生物が付いていて、私にはとても魅力的な石でした。もちろん魚も採れたので、冷たい海水の中により分けていきます。私たちはむしろここからが腕の見せ所です。
「帰るまでが遠足です」とよく言いますが、同じような言い方をするなら、「展示するまでが仕事です」というのが、飼育員の共通認識です。とにかく、生き物を生かしておくこと、まずはそこに全力を注ぎます。水質を保ち、時間の許す限り、できるだけよい環境の中で維持し、そして、今回のような調査航海だったら、下船の直前に、最大の山場である「輸送」という作業に取り掛かります。どんな作戦で行くか、先ほど山本トリーターと段取りをしたところです。
(寝室での小休憩から戻ってきた山本)
航海に参加して、こういう外洋での研究は、「海況に合わせて船を操業する人」や「船の動きと息を合わせてネットを操作する人」など、すさまじい技術を持った航海士さんたちのおかげで成り立っているのだと改めて感じました。今回は特に、荒れた海での絶妙な船やロープの微調整などがなければ、生き物を採集することなど絶対にできなかったでしょう。
そして、サンプルが採れたら研究者たちの出番です。深い知識を持った先生や学生さんたちは、揺れる船の中で顕微鏡をのぞき、種同定や撮影など、かなり夜遅くまでサンプル処理をしていました。
一人の力では何もできませんが、みんなが力を合わせてこそ、貴重なデータを得ることができ、そのデータは大切に大切に、未来への糧として積み重ねられていくのです。当たり前のことなのですが、そんなことに改めて気付かされました。私たちも、「飼育員」として、海から連れてきた生き物たちを最大限生かせるように、力を振り絞ります。
さて、明日は下船の日。正直陸がとてもとても恋しいですが、せっかくのこの非日常も楽しみたいと思います。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。