2009年11月24日
トリーター:唐亀

ソロモンの聴き耳頭巾


動物とコミュニケーションをとりたい、動物自体が駄目、という場合でなければ一度位考えたことがあろうかと想像いたします。
異種間コミュニケーション、元来野生生物と向き合う時に「擬人化」はタブーとされています。
しかしながら飼育という状態で野生を剥き出しにされて、給餌の際に流血沙汰という訳にはいきません。
ですので、最低限の「ルール」を、まあ、人間サイド主体ではありますが・・・、構築する訳です。
これを訓致といいますな。
そのさらなるコミュニケーションがトレーニングであり、ショーであり、種によってはスキンシップである訳です。
まあ、これは我々サイドの都合ですが・・・。
時に「向こう」からコミュニケーションをとって来ることがあります。前置きが長ごう御座いましたが、本日はそんな御話をいたしましょう。

「カエルアンコウ」
最近和名が変更になった浅海性のアンコウ類ですな。
本日の主役は現在小窓水槽にてパーティー・ア・ラカルトに出演中の彼女(間違い御座いません。産卵経験が有ります故)。
これはかつて、バックヤードでくらしていた時の御話。

さて、カエルアンコウ。
頭にあるエスカ(擬似餌、柄の部分がエスカで先端がイリシウム)を振って獲物を誘い、丸呑みにする策士として知られますが、飼育下で「訓致」いたす処であります。
生きた者を常時与える訳には行きませぬ故、針金等に解凍したオキアミ等を付けて生きているように演出いたして食させます。
初めは食さぬものの、時とともに食すようになるのですが、同時に、「エスカを使わなく」なるのです。
まあ、誘わなくても食べる物が来る訳ですから、当然といえば当然。
思えば昔、そんな怠惰に落ちたカエルアンコウで「誘う」映像を撮ろうとして、なかなか巧くいかなかったことが・・・ 。
かつての個体はおおむねそのような感じでしたが。

かの彼女が此処に来たのはまだ 1cmほどの頃。白子網にかかったものでした。
いつものように、搬入後やや暫く経って針金の先のオキアミを食べるように。すくすくと育つ彼女に異変が・・・ 。
もともと、動く魚を瞬時に飲み込む性質、視力的に秀でた処が有るのでしょう。
他で給餌をしていると、寄って待つようになるのです。
あ、まあ、これは別個体でも有りましたから、別に・・・ 。
しかし、私が至極興味を抱いたのは、彼女が「イリシウム」を振るのです。まるで、おねだりするように・・・ 。
もともと、餌をおびき寄せる為のイリシウム、それを用いて催促するのです。
段々エスカレートして、半身水面から出して、空気中でイリシウムを振る彼女には、ぜひuogokoroに・・・ 、と思いましたが・・ 、まあ、無理な話ですな。

動物の行動は不可解至極。面白い。
是が見られるのが飼育者冥利。擬人化も間違えなければ・・・ 。面白いですな。

カエルアンコウカエルアンコウ

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