2024年09月12日
トリーター:亀谷

骨格標本

みなさんこんにちは、新人獣医師の亀谷です。

先日出張にてペンギンの骨格標本を作製しました。今回骨格標本にしたペンギンは、フンボルトペンギンの「ヒカル」と「アカリ」です。
「ヒカル」は悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれるがんで、「アカリ」は卵巣捻転によって 2023年 3月に 22歳の誕生日を目前に亡くなりました。
2羽は生前ずっと一緒に過ごすほど仲の良い姉妹で、“えのすい” でとても愛されていたと聞きます。今回はそんな “えのすい” にたくさんの思い出を残してくれた2羽の骨格標本を作製するとても貴重な経験をしましたので、トリーター日誌で紹介します。

骨格標本の作製では、まず解剖をおこない、その後筋肉や腱などの骨以外の組織を取り除きます。「ヒカル」と「アカリ」は死因の解明のため、大学にて解剖がおこなわれました。実はその頃まだ学生だった私は、「ヒカル」と「アカリ」の解剖に立ち会っており、今回この2羽の標本を作製するという形でまた再会しました。
解剖を終えたら次は博物館にて骨だけの状態にします。方法は煮沸したり分解液に漬けたりするのですが、細かい骨はバラバラにならないように写真のように固定していました。

きれいな骨ができあがると、いよいよ組み立てです。組み立ての工程では、背骨の固定と胸骨まわりの固定、骨盤から後肢にかけての固定に分けておこないました。
背骨の固定では、生前のフンボルトペンギンに近い姿勢を表現するため、椎孔と呼ばれる背骨にある穴に通したワイヤーを湾曲させて、背骨同士の関節の角度を微調整しながらボンドで接着していくのですが、骨と骨の間にある椎間板と呼ばれるクッションのような組織がないため、接着をしていくと少しずつズレが生じる点が難しかったです。
胸骨まわりの固定では、肩甲骨や鎖骨、胸骨、哺乳類にはない鳥口骨と呼ばれる骨など複数の骨が接しています。関節の位置をしっかり確認しながら一つ一つ固定していきます。
骨盤から後肢かけての固定では、左右の対称性に注意を払いながら固定を進めました。

博物館によっては当たり前のように見ることができる骨格標本ですが、いざ実際に自らの手で組み立てるとなると、なんと難しいこと。不器用な私にはかなり骨が折れる工程でした。
骨格標本を作製すること自体、私にとって初めての経験でしたが、こうして2羽が生きていた証を残すことができることを大変光栄に思います。
今回2日間をかけて2羽の骨格標本を完成させる予定でしたが、あいにくの天候で2日目は延期となったため、完成にはしばし時間を要しそうです。
今後「ヒカル」と「アカリ」の標本の進捗がありましたらトリーター日誌にてお知らせします。

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