2024年05月03日

D-ARK 航海 (4)
5月2日、5月3日 MiniROV、ベイトカメラ、釣り採集、CTD採水

  • 期間:2024年4月27日(土)~5月19日(日)
  • 場所:南大東島周辺海域、九州・パラオ海嶺
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは! 八巻です。
早いもので、あっという間に航海7日目となりました。南大東島調査も始まって4日目です。

きのう5月2日は、今回の調査で使用する3台目のロボットが登場しました!
MiniROV こと TriPodFinder2(TPF2)です!
実は私たちが普段相模湾で使用している DU300と同じ FullDepthさんが開発した機器です。TPF2は 1,000m級の水中ドローンで、相模湾調査でも興味深い深海生物を多数みつけています。
今回は大東島特有の石灰岩でできた地形に形成される洞窟の探査が目的ですから、KM-ROV では入ることのできない大きさの穴も存在するはずです。そんなときに KM-ROVからマトリョーシカのように子機として発進して、穴の中を調べようというねらいです。
KM-ROVに接続、かかえられた MiniROVはどこか親子のようでほっこりしますね。


KM-ROVに抱えられた MiniROV

初回ということで、その発着試験が主な目的です。
今回は 530mの水深でテストをおこなうこととなりました。
現場の海底に到着、いよいよテストの開始です。KM-ROVと MiniROVの固定具が外され、ついに発進!
KM-ROVから離れていく MiniROVは宇宙空間を漂っているかのような錯覚を覚えます。
これまで水中で動いている ROVを俯瞰してみるということはなかったので、とても新鮮な光景でした!

探査をおこなう MiniROV探査をおこなう MiniROV


MiniROVから見たウスエイ


MiniROVから見た KM-ROV


MiniROVに搭載されたスラープガンによる採集にもチャレンジ、コブシガニのなかまを採集することができました!

採集したコブシガニの仲間採集したコブシガニの仲間


その後、先日に引き続き魚チームの研究者の方々が、釣り採集をおこなう中、先日のKM-ROV潜行の際にも見かけたハチジョウアカムツが釣れた!と教えに来てくださり、見に行ってみると、元気で生かせそうな希望がみえたので、飼育用として確保させていただくことにしました!


水槽のハチジョウアカムツ


ちなみに日中はあの恐ろしい糸切り魚はいないようですので、まともに採集ができそうです。

その後、餌を付けた海底設置型のカメラの投入、ROVが近づくと逃げてしまうような魚種を中心に撮影を狙います。

ベイトカメラベイトカメラ

この日の夜、船員さんがキハダを釣りあげ、魚チームはそれもすかさず標本にしていました。さすがです!

キハダを標本撮影する魚チームキハダを標本撮影する魚チーム



きょう5月3日は ROVの潜航はなく、採水と昨日設置したベイトカメラの回収が主な目的です。

CTD採水は調査航海ではほぼ必ずおこないます。
同じように見える海の水も、二次元的、三次元的に水温、塩分、酸素濃度、無機塩類、さまざまな要素でとても多様です。
まず目に見えて、南の海、特に外洋は見るからに青いです。

濃い青の大東島の海濃い青の大東島の海

とにかく、海を知るにはまず水を知るということが大切です。
CTDは塩分、温度、水深を連続的に測る装置で、その CTDをニスキン採水器という筒状の採水器とともに取り付けたものが、ロゼッタマルチ採水器です。
ロゼッタマルチ採水器は、船からクレーンとウィンチを使って水中におろしていきます。船とケーブルでつながっているため、CTDの計測結果をリルタイムで確認しながら、目的の水深や水質の場所で採水器の蓋をすることができます。

CTDを海におろすCTDを海におろす

結果的に CTDで調査海域の塩分、水温、水深の鉛直分布が分かり、目的の水深の水が採水できました。
今回の採水の目的は、主に魚をターゲットに環境 DNA解析をおこなうことです。
環境 DNAチームは水が上がってきてから数時間は水の処理にかかりっきりです。


採水した水の処理をおこなう環境 DNAチーム

そのあと、きのう設置したベイトカメラの回収作業をおこないました。
音波の信号を送り、錘を切り離して浮上させ、船を寄せて回収、という手順です。
とても大きな器材ですから、回収は危険を伴う作業です。船員さんが手際よくクレーンなどを用いておこないます。
回収後は、餌についていた生物を回収します。

船員さんがベイトカメラの回収をおこなう船員さんがベイトカメラの回収をおこなう

餌についていたヨコエビ類を回収するベントスチーム餌についていたヨコエビ類を回収するベントスチーム

これでまだおこなっていない調査は、あすに控える内視鏡カメラを残すのみとなりました!

またお会いしましょう。



本プロジェクトはオーシャンショット研究助成事業の助成を受けたものである。
※オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM24-03「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS