2024年05月09日

D-ARK 航海 (7)
5月8日、5月9日 釣獲調査と洞窟探査の熱狂

  • 期間:2024年4月27日(土)~5月19日(日)
  • 場所:南大東島周辺海域、九州・パラオ海嶺
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


大東島の調査も残すところあと 4日。5月 8日はクラムボンで再び 600m域を観察、5月 9日は先日発見した洞窟を探査しました。

きょうの日誌では、まず連日盛り上がりを見せている釣獲調査の成果をご紹介しましょう。

以前も少し紹介しましたが、今回は ROVでは採集が難しい魚種を狙って、船総出で釣獲調査をおこなうことにしています。
ROVは大きな音を出して潜航するため、大型魚の多くは逃げてしまいます。
小さな魚でも ROVで採集するにはスラープガンで吸うしかなく、大抵の魚には逃げられてしまうのです。
釣獲調査は主に移動の少ない日、日中の調査が終わった後夕方から夜間にかけておこない、大小さまざまな魚が釣れています。

釣獲調査のようす釣獲調査のようす

日が暮れるまでは比較的小さな魚ですが、釣れる魚種が多い印象です。
オキアジ、ハチジョウアカムツ、ヒシダイ、チカメキントキ、オキエビス、バケムツ、オカムラギンメ、ハマダイ


ハマダイ

日が暮れると大型の肉食魚が釣れてきます。
クロシビカマス、クロタチカマス、キハダ、チカメエチオピア、バラムツ


チカメエチオピア

一晩に3匹釣れたバラムツ一晩に3匹釣れたバラムツ

大型魚は大きすぎて標本にできないものもありますが、やはり盛り上がります。
キハダやバラムツなど大物が針にかかるといつしか人が集まり、みんなで観戦モードとなります。
特に巨大なキハダがかかったときは、船総出で固唾をのんで見守り、1時間以上の死闘を制してついに釣りあげました!
ちなみにこのマグロは司厨部の方が数日に分けてお刺身やカツにしてくださり、みんなでおいしくいただきました!

標本にできる魚は、魚チームが組織標本をとって、鰭立てをして標本写真をとります。
標本写真はとてもきれいに仕上がり、技術力の高さを感じます。


バケムツの鰭立て


オキエビスの鰭立て


チカメキントキの鰭立て


バケムツの標本写真


オキエビスの標本写真

チカメキントキの標本写真チカメキントキの標本写真

また、今回はクロシビカマスやバラムツなどの肉食魚が多く採集できたため、胃内容物を調べると食べられた魚が出てくることが多く、それらも貴重な標本となったようです。
このまるで鵜飼のような新戦法も、何が出てくるかわからない楽しさがあり、とても盛り上がりました。

ちなみにバケムツを1匹飼育用とすることができました。生かして持ち帰れるように頑張ります!

水槽のバケムツ水槽のバケムツ

さて、次は Mini-ROVを使った洞窟探査です。
今回の調査の目的でもあった海底洞窟の生物相を明らかにするという、大目的のひとつがようやくきょう達成できました!
KM-ROVでは遠巻きにしか見ることができなかった洞窟ですが、Mini-ROVを使えば間近で観察することができます。
洞窟に入っていく Mini-ROVの姿は、宇宙感漂う不思議な光景です!


洞窟に入っていくMini-ROV

Mini-ROVで洞窟を見てみると、これまでとはまるで違った景色が広がっています。正に岩肌を実態顕微鏡で見ているかのような錯覚を覚えるくらい生物に寄ることができ、初めて目にする光景でした。
もちろん研究者の方々も同様で、KM-ROVのコントロールルームは常に歓声が上がる大盛り上がりでした。


洞窟の縁に群生するウデボソヒトデとスナギンチャク類


洞窟の隙間にすむチゴダラ類


穴から顔を出すダイナンアナゴ


ウデボソヒトデの体表や八放サンゴのポリプが観察できる高画質

2つの画面でKM-ROVとMini-ROVのカメラの映す画を見守る2つの画面でKM-ROVとMini-ROVのカメラの映す画を見守る

KM-ROVから Mini-ROVを見ていると、いつもの水中ドローンを使った江の島沖の調査のときも、あんなに岩の近くで観察しているんだと、そんな驚きと発見もありました。

3時間ほどの Mini-ROV洞窟探査。
スラープガンでサンプルを採集することにも成功し、無事 KM-ROVに帰還しました!


KM-ROVに戻る Mini-ROV


採集したヒメセミエビ類とウミヅタ類

採集したキサンゴ類採集したキサンゴ類

これで大東島もあと2日を残すのみです。



本プロジェクトはオーシャンショット研究助成事業の助成を受けたものである。
※オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM24-03「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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